
ある日学校の帰り道に、もうひとりのぼくに出会った。
鏡のむこうから抜け出てきたようなぼくにそっくりの顔。
信じてもらえるかな。ぼくは目に見えない糸で引っぱられるように男の子のあとをつけていった。
その子は長いこと歩いたあげく知らない家に入っていったんだ。
そこでぼくも続いて中に入ろうとしたら…。
色んな人の夢の中に入り込んでしまったぼくは
現実の世界に戻ろうと頑張る。
しかし、その夢の持ち主である人たちは
現実の世界での叶わぬことを
夢の中で実現させようとしていた。
病気の男の子は元気で駆け回る城の城主として
息子を亡くした女性は息子と出会える唯一の場所として夢を見る。
現実の世界と夢の世界では
だいぶ立場が変わっているけれども、
叶わぬ夢を『夢』で叶えようとする人たちの哀れさと愛しさ。
その両方をしっかり味わうことが出来る。
これが書かれたのはもう40年近く前。
その時代にこれだけのものを書ける星さんの
すごさを改めて思い知らされる。
単なるSFではなくて
人が人として生きていくことの「何か」を
しっかり考えさせられる作品が多いので、星さんの作品はやっぱり好きだなぁ~。