
原田宗典といえば、爆笑エッセイで有名ですが、
彼の書く小説は一種独特のグレーな雰囲気を持つ
小説が多いです。
この『劇場の神様』仁収録されている4作品のうち
最初の2作品『ただの一夜』と『夏を剥がす』も
同じようにグレーな言いようのない重さを持った作品でした。
人の持つ白黒はっきりしない部分を描いていて、
何ともいえない思いを持たせる作品でした。
『夫の眼鏡』も同じようにダークな気分になるんだけど、
ただ夫に先立たれた妻のやるせなさって言うのはよく伝わってきて
これはわりと良かったです。
そして表題作の『劇場の神様』
主人公は盗癖のある青年で、高校を退学させられ、
親の伝を辿って芸能プロダクションに入り、
詐欺まがいの講師をしたり、エキストラのような仕事をしたりしているのだけど、
ここでもやはり真っ黒になりきれない、ダークな世界観が見事としか言いようがないです。
物語的にはこれが一番楽しめたけれど、
やはりノーテンキな雰囲気で書かれるエッセイとは違い、
それも含めて彼の作家としての「深さ」と言うものを
改めて感じさせてくれる短編集でした。